
1997年発表。Yo La Tengo(ヨ・ラ・テンゴ)のキャリアにおいて、一つの頂点と評される傑作です。
ノイズとメロディ、アコースティックとエレクトリック、静寂と轟音――バンドのあらゆる音楽的要素が、まるでパレットの上で美しく混ざり合う絵の具のように、この16曲の中に凝縮されています。
プロデューサー、ロジャー・マリンのクリアで温かい音響の恩恵もあり、多様な楽曲群が散漫になることなく、一本の筋の通った作品として成立しています。日常のふとした瞬間に寄り添い、聴き手の心に深く染み入る静かな名盤。インディー・ロックの金字塔を、全曲を通してじっくりと味わってください。
曲紹介
No.,曲名,歌唱,ジャンル/聴きどころ
- 1,Return to Hot Chicken
ローファイ・ポップ。気怠くもキャッチーなギターリフとシンプルなリズムが、アルバムの心地よい幕開けを告げる。 - 2,Moby Octopad
浮遊系アンビエント・インスト。微睡むようなギターのディレイと反復が、空間にゆっくりと広がっていく。夢見心地なトラック。 - 3,Sugarcube
ローファイ・グルーヴ。彼らの代名詞的な楽曲。シンプルなコードと反復するドラムが心地よい中毒性を生むキラーチューン。 - 4,Damage
ドリーミー・ポップ。ジョージアの優しく透明なボーカルが際立つ、甘く切ないミドルテンポの楽曲。 - 5,Deeper Into Movies
サイケデリック・ノイズ・ロック。約7分半にわたる大曲。ミニマルなリフから徐々にノイズの渦に発展し、フィードバックが爆発する圧巻の展開。 - 6,Shadows
メロウなアコースティック・ポップ。温かいサウンドと柔らかなメロディが、木漏れ日のような穏やかな時間を作り出す。 - 7,Stockholm Syndrome
スローコア/バラード。静かに爪弾かれるアコースティックギターと、心を打つジョージアの歌声が響く、静謐な名曲。 - 8,Autumn Sweater
カシオ・ポップ。チープなキーボードの音色が郷愁を誘う、暖かくロマンチックな人気曲。「Two-sweater day」のフレーズが有名。 - 9,Little Honda
ガレージ・ロック・カバー。ザ・ビーチ・ボーイズのカバーを、Yo La Tengoらしいノイズとエッジで再構築したパンキッシュな一曲。 - 10,Green Arrow
ミニマル・インスト。シンプルなギターのフレーズが反復され続ける、瞑想的な短編。 - 11,One PM Again
ポップ・ソング。初期の彼らを思わせる、ガレージ寄りのストレートなロック・ナンバー。 - 12,The Lie and How We Told It
シリアス・バラード。内省的で感情的な歌詞と、緊迫感のあるメロディが印象的。ジョージアの表現力が光る。 - 13,Center of Gravity,Ira,ドリーミー・ポップ。軽快なリズムと、夢の中にいるような浮遊感のあるギターワークが心地よい。
- 14,Spec Bebop,(Inst),クラウトロック/ミニマル。約10分にわたる長尺インスト。延々と続く反復フレーズが、聴き手をトランス状態へと誘うサイケデリックな傑作。
- 15,We’re an American Band
ハード・ロック・カバー。グラン・ファンク・レイルロードのカバー。ドラマーのジェームスがヴォーカルを取り、豪快にロックする異色作。 - 16,My Little Corner of the World
ジャズ・スタンダード・カバー。最後の最後は、ジョージアが歌い上げる温かいジャズ・ワルツで幕を閉じる。
最後に
『I CAN HEAR THE HEART BEATING AS ONE』は、ジャンルや常識に囚われず、ただ**「Yo La Tengoが鳴らしたい音」**を追求し続けた結果生まれた、奇跡的なバランスを持ったアルバムです。
ポップと実験性、静けさと爆発力が同居するこの作品は、聴けば聴くほど新たな発見があります。特に長尺のインスト曲**「Deeper Into Movies」や「Spec Bebop」を聴いた後に、「Autumn Sweater」**のような心温まるポップソングが流れる時の感動は、このバンドにしか生み出せない特別なものです。
是非、このアルバムを通してYo La Tengoの深く、美しい世界に浸ってください!

