Eric Dolphy – Outward Bound(1960)

エリック・ドルフィーが初めてリーダーとして吹き込んだ作品。
“境界の外へ”というタイトル通り、当時のジャズの枠を軽々と飛び越える、鋭さと柔らかさが同居した傑作。
ドルフィー特有のバス・クラリネット、フルート、アルトサックスが、まだ「完全にフリーに行く前」のギリギリのラインで暴れながらも、ブルースとメロディへの深い愛情が聴こえてくる。

ピアノはジャッキー・バイヤード、ベースはジョージ・タッカー、ドラムはロイ・ヘインズ。
このリズム隊が実に素晴らしく、ドルフィーがどんな方向へ飛び出しても必ず受け止め、時には煽り、時には引き戻す。
その張りつめたバランス感がアルバム全体の緊張感を作っている。

曲紹介

  1. G.W.
    開始1秒で世界が変わる。ドルフィーの鋭いアルトが“自分の音楽”を堂々と提示する瞬間。ヘインズのドラムがとにかく攻めている。
  2. On Green Dolphin Street
    スタンダードをここまでねじるのか、という快演。バス・クラリネットの黒さとユーモアが最高。
  3. Les (Young)
    ドルフィーの作曲の良さが出た一曲。跳ねるメロディと変則的なソロが心地よい。
  4. 245
    ブルース形式だが自由度が高く、アルトの叫びが鮮烈。
    バイヤードのピアノソロも必聴。
  5. Glad to Be Unhappy
    フルートでしっとり。ドルフィーの繊細な側面がよく出ている美しい演奏。
  6. Miss Toni
    ユーモラスで温かさもある締め。フリー直前の「ドルフィーの歌心」。

最後に

フリーすぎないが、十分に実験的。ドルフィー初心者でも入りやすいバランス。

バイヤードのピアノが異端と伝統の橋渡しをしていて、このアルバムを“難しくしすぎない”役目を果たしている。

ハードバップからアヴァンギャルドへ移行する、その分岐点の空気を最もよく捉えている作品のひとつ。

Catpack

柔らかな夜の音楽──Catpack が描く“余白”の美学

ロサンゼルスの3人組ユニット Catpack が届けるデビューアルバム『Catpack』は、ネオソウル、ジャズ、R&B、エレクトロニックが静かに溶け合う、柔らかくも芯のある作品だ。
Amber Navran(Voc)、Jacob Mann(Key)、Phil Beaudreau(Trp / Vo)という3人の個性が、無理なく、自然な呼吸のまま一枚に封じ込められている。

アルバム全体を通してまず印象的なのは、“音の表情の豊かさ”だ。
管楽器のあたたかい膨らみ、メロウなシンセの揺れ、そしてアンバーの柔らかな歌声が、決して主張しすぎず、しかし確かな存在感で耳に残る。ジャズ的な洗練を持ちながら、過度に技巧的ではなく、リスナーの日常にすっと溶け込む質感が心地よい。

オープニングの「Walk Away」は、彼らのサウンドの核を示す曲だ。軽やかなビートの上を、歌と管が並走するように滑らかに進む。淡々としながらも感情がほのかに滲む、絶妙な温度感がクセになる。
シングル曲「What I’ve Found」では、ネオソウル的なグルーヴが前面に出ており、アルバムの中でも特に開放感がある。リズムのハネ方と、アンバーの抑えたボーカルの対比が魅力的だ。

中盤の「The Top」や「Yep」は、ミニマルな構成の中に小気味よい遊び心が散りばめられている。Catpack という名前の由来になった “猫っぽいシンセパッチ” をどこか感じさせる音色が、軽やかなユーモアとしてアルバムに彩りを添える。

終盤の「Midnight」や「Next To Me」では、夜の空気のように静かで、淡い光だけが残るようなテクスチャの美しさが際立つ。彼らの音楽は、派手ではない。しかしこの“音の余白”の丁寧な扱いこそ、Catpack を唯一無二にしている部分だろう。

総じて『Catpack』は、ジャンルに縛られずに遊び、しかしルーツへの敬意を忘れない、実に成熟したデビュー作だ。
ジャズのしなやかさ、R&Bの温度、ビートミュージックのモダンさ――そのすべてが“自然体”で共存している。深夜に静かに針を落とすのにも、朝の柔らかい光の中でかけるのにも合う、生活に寄り添うレコードである。

曲ごと短評

1. Walk Away

軽やかなビートの上でボーカルと管が並走する、アルバムの名刺代わりの1曲。静かな高揚感が心地よい。

2. Runnin’

ミニマルなループとウォームなシンセが融合。日常のスピード感をそのまま音にしたような流れの良さ。

3. Yep

“猫っぽい”音色がさりげなく効いた、小粋なスケッチ曲。遊び心が強く、短いながら印象に残る。

4. The Top

抑制されたビートと、淡いハーモニーの組み合わせが絶妙。夜のドライブに似合うクールネス。

5. Tomorrow

柔らかなコード進行が前向きなムードをつくる。穏やかなのにじんわり力をくれる1曲。

6. What I’ve Found

ネオソウル色の強い、アルバムのハイライト。繊細な歌声と跳ねるリズムが美しいコントラスト。

7. Rainbows

フルートやシンセの空気感が透明。曇り空が少し晴れるような、軽い浮遊感のある曲。

8. Midnight

アルバム後半のキーとなる静謐曲。余白の多いアレンジが“深夜の音楽”としての魅力を最大化させる。

9. Next To Me

優しいメロディと穏やかなグルーヴが寄り添う、エンディングにふさわしい温度感のトラック。

Catpack の魅力は、楽器の質感と電子的な処理が絶妙に混ざり合うサウンドメイクにある。トランペットの生々しさ、Amber の柔らかいウィスパーボイス、そして Jacob が作る丸みのあるシンセと空間処理。この3つが“ぶつからずに重なる”よう細やかに設計されており、派手さはないのに極めてクオリティが高い。特にリバーブの使い方が巧みで、音がほどけていく瞬間が美しい。スタジオの空気感ごとレコードに閉じ込めたような作品だ。

zoot sims – down home –

zoot sims- downhome -

アメリカのテナーサックス奏者 zoot sims の1960年発表のスイングジャズのアルバム。

カウント・ベイシー楽団の楽曲を中心に、ごきげんなジャズを聞くことができる。

スイング・ジャズとは?

1930〜40年代はじめにアメリカで大流行した、白人が主体となったジャズのジャンルの一つ。

軽快なダンスミュージック的要素が強く、ジャズの特徴でもある「即興」よりも楽曲が緻密に構成されたものが多い。

このアルバムの特徴

上記に述べた通り、スイング・ジャズは緻密な演奏が特徴であるが、zoot simsは自分の色としての即興を散りばめている。

もちろんzoot simsのサックスは言わずもがなだが、そのバックの演奏陣の中の一人、デイブマッケンナの演奏も聞き所。

An album of swing jazz released in 1960 by the American tenor saxophonist Zoot Sims.

This album allows listeners to enjoy cheerful jazz, focusing on Count Basie Orchestra’s tracks.

What is Swing Jazz? A genre of jazz that was predominantly led by white musicians and became popular in America in the early 1930s to the 1940s.

It heavily embodies lively dance music elements, and the compositions are often more meticulously structured than the characteristic improvisation in jazz.

Special Features of this Album As mentioned above, swing jazz is characterized by precise performances, yet Zoot Sims embeds his improvisational style as his own touch.

Of course, Zoot Sims’ saxophone performance stands out, but the performance of Dave McKenna, among the backing ensemble, is also noteworthy.